こんにちは,事務局の者です。
今月23日にイギリスで行われた国民投票は,EUからの離脱を支持する,という結果に終わりました。
昨年までイギリスに住んでいたこともあり,その結果を注視していました。
2年前に行われた,スコットランドの独立の是非を問う国民投票のときと同様,現状と変わらず,残留するという結果を期待していましたが,期待に反した結果になってしまいました。
ただ,報道されているとおり,若者たちや,都市部の人たちの多くは,EU残留を望んでいたようで,娘の友人たちは,誰一人として離脱派に投票しておらず,SNSは荒れ放題のようです。
ベルギー出身の友人は,もう母国へ帰ろうかしら,と残念そうに言っていました。
現在,EU域内の人の往来が自由なこともあり,本当に多くの外国人が,仕事を求め,経済的に豊かなイギリスへとやって来ています。
移民の人たちの大半は勤勉で,社会で活躍している人も多くおり,そんな状況をごく自然に受け止めているイギリス人に対し,私は懐の深さを感じていました。
一方で,移民に仕事を奪われた,EUが決めた法律を押しつけられた,といった不満が,一部の人たちの間でくすぶっていたのは事実かもしれません。
それに,通貨やテーブルマナー,車の左側通行などといった,大陸とは違った独自のやり方が大好きな国民にとって,自主的に国のあり方を決めることができるようになる離脱ということに,魅力を感じたのかもしれません。
ただ,EU離脱が決まった後,「What is the EU?」が,イギリスでの検索ワード急上昇の第2位になった,というニュースを目にしました。
そもそも,「EUを離脱すること」(検索ワード1位)や,「EU」それ自体の意味が,国民に広く理解されていたのか,甚だ疑問になるようなニュースです。
このような中で国民投票を実施し,世界を混乱に陥れたキャメロン首相の責任は,職を辞するだけで取れるようなものではないように感じます。
投票の結果は覆せないでしょうから,せめて,世界の国々と良好な関係を築いていけるような新しいリーダーが選ばれることを,願わずにはいられません。(事務局)
横浜地裁では,裁判員裁判だけでなく,通常裁判においても,被告人供述調書の採否を留保し,被告人質問を先行させる,という運用が行われています。
一見すると,公判中心主義の徹底ということで,望ましい運用のようにも思われますが,個人的には,若干の疑問を覚えるところです。
被告人質問は,ほとんどの場合,弁護人の主質問から行われますが,被告人供述調書が未採用のため,罪体・犯情から質問していくことになります。
ですが,いくら認め事件とはいえ,罪体・犯情を立証すべきは検察官であり,それを弁護人に質問させるというのは,基本的な立証構造にそぐわない運用であるように思われます。
また,弁護人がその立場に即した主質問を行えば,網羅的にはなり得ず,結局,検察官が反対質問において網羅的に質問していくことになり,主質問を弾劾する反対質問という基本構造が崩れることが懸念されます。
ですので,罪体・犯情の主質問は検察官が,一般情状の主質問は弁護人が行うというように,認め事件の通常裁判においても,きめ細やかな運用がなされるべきではないかと思います。
否認事件であれば,主質問を行うべきは当然弁護人であるように,被告人供述の各部分を法廷に顕出したいのは弁護人なのか,検察官なのか,という基本に即した,適切な質問の振り分けが望まれます。
さらに言えば,被告人及び弁護人が,精査の上,被告人供述調書の証拠調請求に同意しているのであれば,裁判官に同じ内容を一から聞いてもらうことにさほどの意味はないように思われる上,質問時間が十分に確保されなければ,かえって立証が杜撰になる弊害をも招きかねないのではないか,という疑問も覚えるところです。
認め事件の通常裁判においても,被告人質問先行型の運用を続けていくべきか否か,基本的な立証構造などを踏まえた,慎重な検討が望まれます。(末原)
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アメリカで開催されていたコパアメリカ(アメリカ大陸最強国を決めるサッカーの国際大会)の100周年記念大会(センテナリオ)は,チリの優勝で幕を閉じました。
4年に一度開催されるこの大会は,去年開催されたばかりでしたが,大会100周年を記念して,今年も開催されました。
チリは,自国開催だった去年の大会と同じく,決勝でアルゼンチンを破り,連覇を達成しました。
世界最高の選手であるリオネル・メッシを擁するアルゼンチンですが,メッシはこれまでA代表のタイトルに縁がなく,一昨年のワールドカップや去年のコパアメリカに続き,準優勝に甘んじました。
ブラジルやウルグアイがグループステージで敗退し,今回こそアルゼンチンと大いに期待していただけに,この結果は残念でなりません。(末原)
被害者が,被告人の弟に暴行を加えた上,その背中に右足を乗せて立っていたところ,被告人を押さえていた被害者の仲間が手を離した隙に,被告人が,被害者の右脇腹に,あらかじめ置いておいたシースナイフを突き刺し,出血性ショックで死亡させたという事案で,東京高裁は,「被告人は,被害者らを挑発して,被告人に暴力を加えるために被害者らが被告人方に来る事態を招き,被害者らが被告人方に来て暴行を加えてくる可能性がかなり高いと認識していながら,そのような事態を招いた自らの発言について被害者らに謝罪の意向を伝えて,そのような事態を解消するよう努めたり,そのような事態になっていることを警察に告げて救助を求めたりなどすることが可能であったのに,そのような対応をとることなく,被害者らが暴行を加えてきた場合には反撃するつもりで,被告人の弟を被告人方に呼ぶとともに,殺傷能力の高い本件シースナイフを反撃するのに持ち出しやすい場所において準備して対応し,被害者らから暴行を受けたことから,これに対する反撃として本件刺突行為に及んだものであり,被害者らによる弟及び被告人に対する暴行が被告人らの予期していた暴行の内容,程度を超えるものではないことをも踏まえると,本件刺突行為については,正当防衛・過剰防衛の成立に必要な急迫性を欠くものといえる」として,過剰防衛の成立を認めた原判決を破棄しました。
本判決は,積極的加害意思についての先例(最決昭52.7.21)や,自招侵害についての先例(最決平20.5.20)は引用しておらず,侵害回避義務論と同様の発想に基づいた事例判断といえますが,確たる判断基準に依拠していないことが,原判決の結論との齟齬を招いているようにも見え,最高裁による整理が望まれるところです。(末原)
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量刑の基本的な考え方は,犯した罪の報いを受けさせる,という応報刑の要素と,被告人が二度と罪を犯さないようにする,という予防刑の要素を併せ考慮し,刑罰を決定するというものですが,予防刑の亜種として,被告人が危険人物であればあるほど長く閉じ込めておくことが再犯を防止し,社会の安全にもつながる,という保安の考え方も存在します。
一般の素直な感覚として理解できないものではありませんが,このような隔離機能を強調し過ぎると,およそ犯罪者は社会にとって有害であり,可能な限り長く閉じ込めておくことが,社会にとって最も有益である,という極論にも結び付きかねません。
食うに困った万引き初犯も懲役10年でいいのか,冤罪だったらどうするのか,などといったことを考えると,これほど恐ろしく,寛容さのない社会はないように思われます。
罪を犯した者のほとんどは,遅かれ早かれ社会に戻ることになります。
ここで大切なのは,やはり,まずもって罪の重さを知らしめ,その上で,いかに二度と罪を犯さないようにさせるか,という応報刑と予防刑の観点だと思います。
そして,犯した罪に対して重すぎる罰は,社会からの長期の離脱により,かえって更生を妨げるおそれがある一方,犯した罪に対して軽すぎる罰は,被害者や社会の怒りを生むだけでなく,罪を犯した者が十分に反省を深める契機を奪い,かえって更生を妨げかねないという,応報刑と予防刑の間に存在する矛盾にも,十分に注意を払うべきです。
保安の考え方は,いわば先送りや排除の理論であり,問題の本質に迫ることはできないように思われます。(末原)
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「罪名別解説」の「知的財産事件」を修正し,さらに詳しい解説を加えました。
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東京(品川・新橋・渋谷・新宿・池袋・大崎・五反田・目黒・恵比寿・原宿・代々木・蒲田・大森・大井町・浜松町・有楽町・銀座など)
「罪名別解説」の「交通事件」を修正し,さらに詳しい解説を加えました。
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東京(品川・新橋・渋谷・新宿・池袋・大崎・五反田・目黒・恵比寿・原宿・代々木・蒲田・大森・大井町・浜松町・有楽町・銀座など)
「罪名別解説」の「危険ドラッグ(ラッシュ等)」を修正し,さらに詳しい解説を加えました。
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神奈川(横浜・川崎・相模原・横須賀・小田原・保土ヶ谷・鎌倉・藤沢・平塚・厚木・戸塚・大船・逗子・久里浜・茅ヶ崎・海老名など)
東京(品川・新橋・渋谷・新宿・池袋・大崎・五反田・目黒・恵比寿・原宿・代々木・蒲田・大森・大井町・浜松町・有楽町・銀座など)
被疑者が,13歳の女子中学生に痴漢をしたという事案で,最高裁は,「本件において勾留の必要性の判断を左右する要素は,罪証隠滅の現実的可能性の程度と考えられ」るが,「被疑者が被害少女に接触する可能性が高いことを示すような具体的な事情はうかがわれない…ところ,原決定の説示をみても,被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあるというのみで,その可能性の程度について原々審と異なる判断をした理由が何ら示されていない」として,原決定を取り消し,準抗告を棄却しました。
また,成年後見人が,成年被後見人の貯金口座から300万円を横領したという事案で,最高裁は,「本件は,…長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること,本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず,被疑者は警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと,被疑者の身上関係等からすると,本件が罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高い事案であるとは認められない」ところ,「勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず,原決定の結論を是認することはできない」として,原決定を取り消し,準抗告を棄却しました。
罪証隠滅や逃亡のおそれについては,抽象的可能性では足りず,現実的可能性まで要求するものと,理論上は従前から指摘されてきましたが,実務上は,抽象的可能性で足りるとしているとしか考えられない状況が,長らく続いてきました。
本決定は,これまでの勾留実務を厳しく戒めるものであり,非常に意義の大きい判例であるといえます。(末原)
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MLB(メジャーリーグベースボール)のマーリンズに所属する鈴木イチロー選手が,日米通算4257安打を達成しました。
ピート・ローズの4256安打がMLB記録ですが,日米通算とはいえ,イチロー選手はこれを超えたことになります。
名選手の基準の1つとされる2000本安打をはるかに超える凄まじい世界記録であり,イチロー選手が日本の誇りであることに何の疑いもありません。
MLB単独での3000本安打にも,あと21本というところまで迫っていますし,一体どこまで記録が伸びるのか,日々楽しみにしているところです。(末原)