法定刑
強制性交等や準強制性交等,監護者性交等の罪を犯した場合,5年以上20年以下の懲役に処せられます(刑法177条,178条2項,179条2項)。
もっとも,その際に被害者が死傷した場合,強制性交等致死傷の罪となり,無期または6年以上20年以下の懲役に処せられ,起訴されると裁判員裁判になります(刑法181条2項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号。お知らせ「新法考察4(性犯罪の厳罰化【H29.7.13施行】)」も併せてご覧ください)。
なお,強制性交等行為から10年,強制性交等致傷行為から15年,強制性交等致死行為から30年で時効になります(刑事訴訟法250条1項1号,2項2,3号)。
弁護方針
逮捕等回避
強制性交等の場合,既に示談が成立している場合でもない限り,逮捕・勾留を回避することは極めて困難です。
早期に弁護士に相談し,自首も検討しつつ,逮捕・勾留回避活動をしっかり行い,逮捕・報道回避,釈放獲得を目指す必要があります(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」も併せてご覧ください)。
仮に勾留され,起訴されてしまったとしても,既に示談が成立しているなど弁護士が適切な内容の保釈請求をすれば,保釈が認められる可能性はあります。
もっとも,強制性交等は,初犯でも実刑の可能性が高い重大犯罪ですので,保釈が認められないことも少なくありません。
このような場合,裁判がある程度進んだ時点で,再度保釈にチャレンジすることになります(お知らせ「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
強制性交等の場合,弁護士を介して被害者に謝罪した上,示談成立を目指すことが活動の中心になります(弁護士費用プラン①参照)。
交渉が難航することも珍しくありませんので,誠実かつ粘り強い交渉が必要不可欠です。
仮に,捜査段階では示談が成立せず,裁判段階に移行してしまったとしても,諦めず交渉を続けることが重要です。
強制性交等の場合,初犯でも原則実刑ですので,示談が執行猶予獲得の鍵になります(お知らせ「示談」「情状弁護」も併せてご覧ください)。
また,被害者が示談を完全に拒否している場合,弁護士を介して贖罪寄付を行うこともあります。
もっとも,後に被害者が翻意し,寄付金に加えて示談金も用意しなければならないリスクもありますので,贖罪寄付を行うかどうかは,慎重に判断しなければなりません。
他に,自首,依存症治療,家族など監督者の存在のアピールなども必要になってきます。
特に,繰り返し強制性交等行為に及んでしまっている場合,弁護士が紹介する専門のクリニックで性依存症治療を受けなければ,再犯を防止することは難しいといわざるを得ません。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該強制性交等行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
強制性交等の場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
暴行や脅迫を伴わない準強制性交等の事案では,合意の上だったとの言い分がよく見られますが,そのことがうかがわれるような客観的状況だったか否かが,非常に重要になってきます。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
刑法177条
13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。
刑法178条
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,前条の例による。
刑法179条
2 18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は,第177条の例による。
刑法181条
2 第177条,第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し,よって人を死傷させた者は,無期又は6年以上の懲役に処する。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条
1 地方裁判所は,次に掲げる事件については,次条又は第3条の2の決定があった場合を除き,この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は,裁判所法第26条の規定にかかわらず,裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
刑事訴訟法250条
1 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については30年
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
三 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
刑法12条
1 懲役は,無期及び有期とし,有期懲役は,1月以上20年以下とする。