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痴漢と強制わいせつ

電車内で衣服の上から女性の胸を触った場合,条例違反としての痴漢に当たります。

これに対し,直に胸を掴んだ場合,より悪質であるという理由で,痴漢ではなく強制わいせつで立件されることになると考えられます。

では,ホテルの一室で衣服の上から女性の胸を触った場合,成立するのは痴漢でしょうか,強制わいせつでしょうか。

条例違反が成立するのは,公共の場において犯罪が行われた場合に限られます。

ホテルの一室は通常公共の場ではないので,痴漢は成立しそうにありません。

これに対し,強制わいせつの成立を妨げる事情は特になさそうです。

ですが,同じ行為であっても,公共の場だと痴漢,公共の場ではないとより刑が重い強制わいせつ,というのは,公共の場で性犯罪に及ぶ方が異常ではないか,という考え方もあることからしても,なぜこうなるのか,正直よく分からないところです。

実際,盗撮の場合は,公共の場だと条例違反,公共の場ではないと軽犯罪法違反になり,公共の場ではない方が軽い刑になります。

では,上記のケースが実務上どのように処理されるのかといえば,やはり強制わいせつで立件,ということになるかと思います。

性犯罪は,被害届や告訴状が比較的受理されやすいタイプの犯罪ですので,被疑者からすると,不起訴にならなければ即裁判,ということになってしまう可能性もあります。

痴漢であれば,略式罰金という中間的な結論もあり得ますが,強制わいせつには罰金刑がないので,このような差異が生じてきます。

以上のように,痴漢か強制わいせつかで,かなり帰結が異なってきますので,弁護士としては,本来痴漢として扱われるべき事案が,安易に強制わいせつとして扱われることのないよう,十分注意しなければならないといえます。(末原)

 
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