こんにちは,事務局の者です。
末原刑事法律事務所から横浜駅に続く地下街には,大きな本屋さんがあるのですが,週に一度はふらっと立ち寄り,売れ筋ランキングの本をチェックしています。
今回手に取ったのは,昨年末ノーベル文学賞を取ったカズオ・イシグロ氏の「日の名残り」という,第一次大戦後,英国の名家に仕えたスティーブンスという執事が主人公の物語です。
35年間仕えたダーリントン卿が他界し,戦後新しく領主になったアメリカ人の富豪に暇をもらい,以前一緒に働いていた女中頭に会いに行くためにイギリスの田舎を旅しつつ,過去を振り返る形式で書かれています。
英国の首相や外相,ヨーロッパ諸国の高官の,歴史的にも重要な密談が行われたお屋敷が舞台となっています。
その領主である高徳な卿にお仕えすることを誇りとし,執事として完璧な品格を追い求めてきたスティーブンス。
戦後,卿はドイツの協力者という不名誉な烙印を押されてしまいましたが,主人公が卿を疑うことはなく,世間がどう評価しようと英国紳士として当然の行為だったと回想しています。
しかし,最終章でどんでん返しを食らい,そこまで主人公に共感していた私は困惑してしまいました。
語り手自身を疑って読み進めなければならなかったことに,最後になって気づかされたのです。
スティーブンスは,執事としての品格を追い求めるあまり,父の死に向き合わなかったり,女中からの想いに気づかなかったりと,自分を押し殺して生きてきたことに気づき,一人涙するという結末を迎えます。
この本はもう一度読み直さなければなりませんし,何度でも読み返したくなる,そんな一冊でした。(事務局)
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