勾留手続や保釈手続の実際は,地域によって微妙に異なります。
まず,勾留手続は,通常,午前中に逮捕された場合は翌日,午後に逮捕された場合は翌々日に行われます。
午前中に検察庁に行き,検察官が勾留請求をすれば午後に裁判所,そこで勾留するかどうかの判断が下されます。
もっとも,東京の場合,午前中に検察庁に行くところまでは同じですが,検察官が勾留請求をした場合,裁判所に行くのはその翌日になります。
単純に事件が多いからなのか,それ以外に理由があるのか不明ですが,弁護士としては注意が必要なところです。
一方,保釈手続については,裁判所が保釈の許否を判断するまでの時間が,地域により異なってきます。
通常,保釈請求の当日か,土日祝日を飛ばして翌日に判断が出ますが,横浜などの大都市になってくると,これが保釈請求の翌々日に,東京に至っては,保釈請求の3日後に判断が出ることも珍しくありません。
事件の多寡がある以上仕方がない,といってしまえばそれまでですが,不必要な身柄拘束は極力回避されるべきですので,改善に期待したいところです。(末原)
末原刑事法律事務所対応地域
神奈川(横浜・川崎・相模原・横須賀・小田原・保土ヶ谷・鎌倉・藤沢・平塚・厚木・戸塚・大船・逗子・久里浜・茅ヶ崎・海老名など)及び東京
「罪名別解説」に,「公務執行妨害」を追加いたしました。
対応地域
神奈川(横浜・川崎・相模原・横須賀・小田原・保土ヶ谷・鎌倉・藤沢・平塚・厚木・戸塚・大船・逗子・久里浜・茅ヶ崎・海老名など)
東京(品川・新橋・渋谷・新宿・池袋・大崎・五反田・目黒・恵比寿・原宿・代々木・蒲田・大森・大井町・浜松町・有楽町・銀座など)
被疑者が逮捕されると,逮捕の事実は,警察から報道機関に伝達されます。
そして,報道機関が,事件の重大性・希少性や被疑者の社会的地位などから,報道価値があると判断した場合,報道されることになります。
事件が報道されると,被疑者には,仕事や家族を失うなどの社会的制裁が科されることになります。
被疑者が確かに罪を犯した場合,このような社会的制裁も,罪に対する罰の一つとして,ある程度仕方がないことなのかもしれません。
ですが,被疑者の潔白が後に明らかになった場合,仕方がないでは済まされないように思います。
刑事弁護士をやっていると,逮捕のハードルは,世間の皆様が思っているよりはるかに低いことが分かってきます。
そして,逮捕されたものの,その後十分な証拠が集まらず,嫌疑不十分による不起訴処分になることは,実のところよくあります。
日本の非常に高い有罪率は,このように検察官が嫌疑不十分にする事件が多数あるからこそのものです。
以上のような捜査の実態と,逮捕時の報道のあり方は,果たして整合しているのか,少なくとも否認事件については,せめて被疑者が起訴されるまで報道に慎重であるべきではないか,疑問を覚えます。
無罪のほとんどは報道され,一定の名誉回復が図られますが,嫌疑不十分が報道されることは少ないので,なおさらです。
警察も,報道機関も,逮捕の事実自体は間違いないのだから,それを伝えても何の問題もないという認識なのかもしれません。
ですが,世間では,逮捕=有罪という行き過ぎたイメージが付きまとうこともまた事実であり,そのことを踏まえた対応がなされるべきではないかと思います。(末原)
対応地域:神奈川(横浜・川崎・相模原・横須賀・小田原・保土ヶ谷・鎌倉・藤沢・平塚・厚木・戸塚・大船・逗子・久里浜・茅ヶ崎・海老名など)及び東京
無実の者を弁護したり,被害者を支援したりするのに,特に説明は必要ないかと思います。
人々の権利利益を守る弁護士として,いわばやって当然のことで,その社会的意義は明らかです。
一方,情状弁護,つまり罪を犯した者の弁護については,理解を得られにくいところかもしれませんので,ここで私なりの考えを述べておきます。
罪を犯した者を弁護するといっても,罪をなかったことにしようとするわけではありません。
罪を犯した以上,一定の償いをすべきと考えるのは,弁護士であっても同じです。
しかし,本来負うべき以上の責任を不当に負わせるようなことは,断固容認できません。
例えば,万引きの初犯が,罪を正直に認め,謝罪や反省の念を表している場合に,法定刑の上限が懲役10年だからといって,いきなり刑務所に10年行くべきだとは,まったく思いません。
これは極端な例で,ここまで不当な判断は,検察庁も裁判所もすることはありませんが,やや行き過ぎなのではないかと思うことは,残念ながらよくあります。
この事案であれば,重くても略式罰金,基本的には示談等の事情に鑑みて起訴猶予,場合によっては警察限りでの微罪処分も検討されるべきであり,各事案において最も妥当な結論がきちんと導かれるよう,弁護士は,常に目を光らせていなければなりません。
また,罪を犯した者と向き合う時間は,検察官や裁判官よりも,弁護士の方がはるかに長いので,本人が再犯に及んでしまうことのないよう,更生への道をしっかりと示すことも,弁護士の重要な役割です。
本人や家族に事件やその後のことを深く考えさせ,立ち直るための具体的な手段を講じる手助けをすることは,実は弁護士にしかできないことといえます。
さらに,その過程で,罪を犯した者の被害者に対する償いを促進することもできます。
ただ依頼人の利益だけを考えればいいという単純な話ではなく,被害者の心情を酌み,それを本人に伝えてさらなる反省を促し,双方納得できる解決を模索していく必要があります。
示談交渉という弁護活動は,ただ罪を犯した者の処分や判決を軽くするためだけのものではなく,被害者の心情を本人に伝えるための大切な機会であり,それが本人のさらなる反省,ひいては更生に繋がるものと信じ,日々の交渉に当たっているところです。
弁護士によって,情状弁護の捉え方は様々だと思いますが,現時点における私なりの考えは以上のようなもので,情状弁護には社会的意義が十分にあるものと思っています。(末原)
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条例違反としての淫行と,児童買春の区別は,金銭等のやり取りの有無を基準になされており,明確に区別することができます。
一方,淫行・児童買春と,児童福祉法違反の区別は,どれほど悪質かという抽象的な基準によってなされており,必ずしも明確に区別できるわけではありません。
実際,弁護していて,当初は淫行として扱われていたのが,途中で児童福祉法違反に切り替わるということが,何度かありました。
また,児童買春は,淫行よりは刑が重いが,児童福祉法違反よりは軽いという微妙な位置付けのため,児童買春と児童福祉法違反の区別は,淫行と児童福祉法違反の区別以上に分かりにくいところです。
痴漢と強制わいせつの間にも同じような問題がありますが,罪刑法定主義や明確性の原則といった法の大原則からすると,実務上これらの罪をどのように区別するかについては,もう少し明文で具体化すべきではないかと思います。
弁護士としては,以上のような問題を踏まえつつ,本来淫行や児童買春として扱われるべき事案が,安易に児童福祉法違反として扱われることのないよう,十分注意しなければならないといえます。(末原)
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電車内で衣服の上から女性の胸を触った場合,条例違反としての痴漢に当たります。
これに対し,直に胸を掴んだ場合,より悪質であるという理由で,痴漢ではなく強制わいせつで立件されることになると考えられます。
では,ホテルの一室で衣服の上から女性の胸を触った場合,成立するのは痴漢でしょうか,強制わいせつでしょうか。
条例違反が成立するのは,公共の場において犯罪が行われた場合に限られます。
ホテルの一室は通常公共の場ではないので,痴漢は成立しそうにありません。
これに対し,強制わいせつの成立を妨げる事情は特になさそうです。
ですが,同じ行為であっても,公共の場だと痴漢,公共の場ではないとより刑が重い強制わいせつ,というのは,公共の場で性犯罪に及ぶ方が異常ではないか,という考え方もあることからしても,なぜこうなるのか,正直よく分からないところです。
実際,盗撮の場合は,公共の場だと条例違反,公共の場ではないと軽犯罪法違反になり,公共の場ではない方が軽い刑になります。
では,上記のケースが実務上どのように処理されるのかといえば,やはり強制わいせつで立件,ということになるかと思います。
性犯罪は,被害届や告訴状が比較的受理されやすいタイプの犯罪ですので,被疑者からすると,不起訴にならなければ即裁判,ということになってしまう可能性もあります。
痴漢であれば,略式罰金という中間的な結論もあり得ますが,強制わいせつには罰金刑がないので,このような差異が生じてきます。
以上のように,痴漢か強制わいせつかで,かなり帰結が異なってきますので,弁護士としては,本来痴漢として扱われるべき事案が,安易に強制わいせつとして扱われることのないよう,十分注意しなければならないといえます。(末原)
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同じ条例違反でも,痴漢と盗撮と淫行では,それぞれ罪質が異なり,それに応じて,認め事件における弁護の仕方も変わってきます。
まず,痴漢は,最も被害者の処罰感情が重視される類型といえます。
被害者が特定されていなければ,不起訴どころか,不立件や不送致で事件が終結することもありますし,示談が成立すれば,同種前科が複数あるような場合でない限り,起訴猶予になる可能性が十分にあります。
一方,盗撮も,被害者が特定されている場合,示談が最重要になる点は,痴漢と異なりません。
ですが,被害者が特定されていなければ,処罰されることはないかといえば,必ずしもそうではありません。
スマートフォン等が解析に回され,同端末により撮影された写真や動画は,既に消去された分を含め,すべて復元されますが,その数があまりに多いと,社会的に容認するわけにはいかないということで,略式罰金になることもあります。
弁護の仕方として,示談だけでは足りない場合もあるということです。
最後に,淫行は,強姦や強制わいせつとはされていないことから分かるように,相手の同意があることが前提になっています。
そうだとすると,相手に示談を持ちかけるというのは,ややおかしな話だということになります。
そもそも,被害者の性的自由を保護するというよりは,青少年との淫行は社会的に容認できないというパターナリズムから罰則が規定されているので,弁護の仕方としては,処罰の社会的必要性が低いことを主張していくことになります。
このように,痴漢と盗撮と淫行では,それぞれ弁護の仕方が異なってくるので,弁護士としては,上記のことを正確に理解しておかなければならないといえます。(末原)
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「罪名別解説」に,「住居侵入・建造物侵入」「器物損壊」を追加すると共に,「痴漢」「盗撮」を修正いたしました。
また,「用語集」に,「過剰防衛」「現住性」「公共の危険」「焼損」「心神耗弱」「心神喪失」「正当防衛」「犯人性」を追加いたしました。
首都圏で刑事事件に強いと謳っている弁護士事務所の中には,示談交渉の際に被害者に直接会うことはしない,という方針のところがいくつかあるようです。
もちろん,示談交渉を完全に拒否されたり,逆に,電話等のやり取りだけで示談が成立したりした場合には,直接会わずじまいということもあるかと思います。
ですが,ここで言っているのは,電話等だけでは示談が成立しそうにないが,直接会えば成立する見込みがある場合に,当然会いに行くべきであるところ,労力削減・案件の回転率重視の観点から,示談を断念する弁護士事務所が複数存在するということです。
刑事事件に強いと謳っておきながら,このような弁護を平気でやるというのは,弁護士としてのプライドが感じられず,同じ弁護士として恥ずかしく思います。
刑事事件に巻き込まれて弁護士をお探しになっている方は,まずこの点を弁護士に問い質し,判断材料の一つにすると良いかと思います。(末原)
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少年事件における弁護には,特別なやりがいがあります。
それは,少年手続の中で,少年が劇的に変わっていく様を,間近で見られるところです。
少年は,自身の非行が何ゆえ犯罪に当たるのかという,ごく基本的なところから理解していないことがほとんどです。
少年の弁護人・付添人は,少年が抱える様々な問題と,その解決策について,少年に一つ一つ理解させていかなければなりません。
弁護人・付添人が正解と考えるものを,すぐに少年に教える方が簡単ですが,それだと,少年の思考力・想像力は,十分に深まっていきません。
少年が考えを巡らせる取っ掛かりとなるヒントを適切に示しながら,丁寧に,辛抱強く少年を導いていくことが必要です。
当然,成人事件に比べ,接見・面会の回数は多くなりがちで,負担が小さいとはいえません。
ですが,当初はほとんど何も考えられていなかった少年が,審判のときには裁判官・付添人・調査官からの質問にしっかり答えられるまでに思考力・想像力を深めているのを目の当たりにする度,この子ならきっと更生できると信じられますし,弁護してよかったと思います。
また,少年の更生環境をきちんと整えれば,審判の結果においても報われることが非常に多いのが,少年事件の良いところです。
裁判官にチャンスをもらった少年が,周囲の期待に応え,将来立派に社会で活躍していく,それが少年事件における弁護のやりがいといえます。(末原)
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